2005人が本棚に入れています
本棚に追加
/456ページ
(いや、……近場で下ろせば問題ないか?)
だがすぐそんなことを思ってしまう程度には、どうも荒木羽理のことが気になって仕方がない大葉だ。
(裸を見ちまったからか?)
やけに庇護欲を搔き立てられてしまうのは。
会社で見た荒木羽理と言う女性は、プライベートで目にした無防備な彼女よりはるかにしっかりして見えたのだけれど。
酔っ払った荒木は、見た目こそ出来る会社員といった綺麗な格好のままだったのに、中身は先日有り得ない状況で対面した時のぶっ飛んだ彼女そのもので。
倍相岳斗も荒木のあんな姿を見たんだと思うと、妙に落ち着かない気持ちになった。
(酔った荒木。アホみたいに可愛くて……危なっかし過ぎるだろ)
〝アホみたい〟ではなくアホそのものなのだが、荒木羽理に対してお花畑な大葉はそのことには気付けないまま、一人危機感を募らせる。
大葉の勘だが、倍相は荒木のことを憎からず思っている気がするからだ。
(そんな男の前で無防備に酔い潰れてんじゃねぇよ)
普通気になる男の前ではもっと配慮をするものではないのだろうか。
およそ大葉の中にある〝常識的な女性〟の言動には有り得ない動きをする荒木に、大葉ははっきり言って翻弄されまくり。
アルコールで潤んだ荒木の瞳と、上気した頬。
あれは本当に色っぽくてやばかった!と無意識に思ってしまってから、大葉は(これはきっと、酔っ払い女の酒気に当てられたに違いない)と思って。
そう考えてみれば、今ハンドルを握っている車内にもそこはかとなく荒木の纏っていた甘い芳香と酒のにおいが残っているようで、大葉は「マジか……」とつぶやいて、反応しかけている股間を意識した。
最初のコメントを投稿しよう!