6.気になって仕方がない

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 だって、きっと……そのせいで倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)に一歩も二歩も先を越されているのだから。  ふとそんなことを考えて(俺はバカか……)と自分をたしなめた大葉(たいよう)は、尻尾を振りながらずっと足元に待機しているキュウリの頭を再度ヨシヨシ、と撫でてやる。   「とりあえず……パパはシャワー浴びてきまちゅね……」  一人玄関先へ立ち止まったまま百面相をする主人を見上げてくる純粋無垢(じゅんすいむく)なキュウリの視線に居た(たま)れなくなった大葉(たいよう)は、足元の愛犬に別れを告げるとそそくさと脱衣所へ向かった。 *** 「(つめ)てっ!」  シャワー水栓本体部、温度調節ハンドルを水にして勢いよく頭から冷水を浴びた大葉(たいよう)は、その冷たさにギュッと身体を縮こまらせた。  季節は初夏。  確実に夏へ向かって日々気温が高くなっている昨今とは言え、直射日光の当たる場所でなし。  夜の風呂場で浴びるには冷水は冷たすぎた。  お陰様で熱を持ちかけていた愚息もキュゥッと縮み上がって自己処理をする手間は省けたけれど……。 (風邪ひいちまうわ!)  ほんのちょっとハンドルを回してぬるま湯が出るように切り替えると、大葉(たいよう)は自分を甘やかした。  シャンプーを適当に出してガシガシと髪を洗って……、頭に泡を乗っけたまま牛のマークの固形石鹸で全身を乱暴に清めてから……。 (上がるか……)  一気にシャワーで泡を洗い流してサッパリした身体から水滴を滴らせながらドアに手を伸ばした。  と――。  こちらから開ける前に勝手に扉が開いて。 「あれぇ? 屋久蓑(やくみにょ)部長(ぶちょぉ)? 何れまだ(まりゃ)うちにいるんれしゅかぁ?」  真っ裸の荒木羽理が水滴を滴らせ、フラフラしながら愛くるしい瞳でキョトンと大葉(たいよう)を見上げてきた。 (ちょっと待て。何でだ!!)  ぐわりと()ち上がる息子に戸惑いながら、大葉(たいよう)が思わず声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない――。
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