7.今夜は泊まって行け

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***  風呂から上がるなり頭から水滴を滴らせながら腰タオル姿のまま。  キッチンへ直行して、椅子を持ち運び始めた飼い主を不思議そうな顔で見上げながら、キュウリが爪音をカチャカチャ言わせながら大葉(たいよう)の後を付き歩く。 (ああ、そろそろ爪切ってやらねぇとな……)  その音を耳にしてそんなことを思いつつ洗面所へ戻ったら、大葉(たいよう)の足元を見た荒木(あらき)羽理(うり)が、「ああ~ん、ダックス(らっくしゅぅ)~。可愛いれしゅねぇ~」とヘラリと笑った。  てっきり完全に猫派で犬には興味がないと思っていた荒木に手放しで愛犬を褒められた大葉(たいよう)は、嬉しくなって。「美人だろ。うちの……、キュウリ」と答えた。 (やべっ。危うくコイツの前で〝ウリちゃん〟とか呼びそうになっちまった)  さすがにそれは変な誤解を招きそうだと思って。 「とりあえず座れ」  大葉(たいよう)は失態を誤魔化すみたいに荒木の手を引いて持ってきた椅子へ座らせた。  ふにゃふにゃと所在のない彼女を、いつも自分を拭くときみたく雑に扱ったりせず、壊れものに触れるみたいに丁寧に優しくタオルドライしてやる。  ドライヤーを手に、「熱かったらすぐ言えよ?」と言ったら、「はぁーい!」と荒木が勢いよく手を挙げて。 (バカっ。そんな激しく動いたらタオルが外れちまうだろ!)  無防備すぎて死ぬほど心臓と股間に悪い。  早いところ髪の毛を乾かしてやって、さっさと服を着せてしまわねば、と思った大葉(たいよう)である。
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