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何でそんな服しか持ってきていないんだ!と屋久蓑大葉から責められた荒木羽理は、(だって、ワープしたあと外に出ることを考えたら、まともな格好しておかなきゃって思うじゃないですかっ)と、かすみの掛かった頭のまま心の中、割とまともな言い訳をしていた。
「外に出るかりゃれすよっ」
なのに頭で思ったままをうまく言葉に出来ないのは、きっとアルコールのせいだ。そう分かっていても、どうすることも出来ないのだから意味がない。
羞恥心とか恥じらいとか……乙女が持つべき色んなものがポォーンと思考力の彼方へ追いやられていることを頭の片隅で何となく自覚しながらも、肝心な対外面がついてこないのだから性質が悪いではないか。
「はぁ!? 荒木、ひょっとしてもう一度俺にお前の家まで送らせるつもりかっ!」
自分だけラフな格好に着替えて〝お寛ぎモード〟な屋久蓑部長に、羽理は何となくズルイと思ってしまって。
「自分らけジュルイれしゅ」
本来ならば、『タクシーとかで帰るのでお気遣いなく!』と返すところなのに、ショート寸前な思考回路では、思いの強い方が先に出てしまうらしい。
「じゅるい? ……ああ、ズルイってことか。……って何がだ!」
「わらちらってこのままごろぉーんと転がれるような服が着たいれす!」
そう。家でいつも着ているような、ダラリとえり首あたりが伸びたようなだらけたやつ。
もしくはダボダボTシャツにズボンなし!
屋久蓑部長が聞いたら、『俺は別にだらけた格好なんてしていないぞ⁉︎』と反論してきそうなことを思いつつ。
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