7.今夜は泊まって行け

14/20
前へ
/457ページ
次へ
「あっ。れも……お昼ご飯とか買うお金がないれす」 「朝飯も弁当も俺が作ってやろう」 「ホントれすかっ!?」 「ああ……」 ***  食事の話を出した途端、前のめりになった荒木(あらき)羽理(うり)を見て、大葉(たいよう)はあと一押しだ!と意気込んだ。 「俺が作るもんは結構美味(うま)いと家族からも評判だぞ?」 「卵焼きは……甘いにょにしれくれましゅか?」 「ああ、お安い御用だ。ついでに無一文は不安だろうからも付けてやろう」  実は大葉(たいよう)自身は、塩辛い卵焼きが好きなのだが、荒木が甘いのを入れて欲しいと言うのなら、いくらでもそちらに合わせてやろうじゃないかと思う。 「きゃー。至れり(ちゅ)くせりなのれすっ。……んー、じゃあ、今日(きょお)はこのままのお家にお泊りしちゃいましゅ」 (よっしゃぁぁぁぁ!)  荒木の言葉に心の中で盛大に両腕を振り上げてガッツポーズをした大葉(たいよう)だったが、一生懸命頑張って顔に出すのだけはこらえた。  なのに――。 「ぶちょ? もう一つ(ひろつ)お願いがありゅのれす」  荒木が、自分の服をちょいちょいっと引っ張りながら、「こにょ服れはゆっくり(やしゅ)めしょうにありましぇん。迷惑(めぇわく)ついで(ちゅいれ)に、ぶちょぉの服、貸して欲しいのれす」と上目遣いで見上げてきたからたまらない。 (そんなの、OKに決まっているじゃないかっ!)  何ならどうやって彼シャツ(厳密には彼氏ではないがっ!)という男のロマンを達成しようかと脳内で模索していたくらいだ。 「も、もちろん、構わん……。ただ」 「たりゃ?」
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2005人が本棚に入れています
本棚に追加