7.今夜は泊まって行け

18/20

2006人が本棚に入れています
本棚に追加
/457ページ
***  結局大葉(たいよう)荒木(あらき)羽理(うり)に押し切られる形で彼女と二人、自分のセミダブルベッドで同衾(どうきん)する羽目になってしまった。  荒木の体温を何となぁ~く右側にほこほこと感じながら……落ちない程度に思いっきり左の端っこへ寄っているのだが。  荒木ときたら、「おやしゅみなしゃい」と言って横たわるなり、大葉(たいよう)の「ああ、おやすみ」という返事を聞くか聞かないかのうちにスースーと気持ちのよさそうな寝息を立て始めて、大葉(たいよう)は(マジか!)と思わずにはいられなかった。  慣れない部屋で、荒木が夜中にトイレへ行こうとして転んだりしてはいけないと、シーリングライトをほんのりと薄明りになるよう設定してやったのが(あだ)になって、真っ暗でないと寝付けない大葉(たいよう)の目は冴える一方。  オマケというか、トドメというか。薄闇に眼が馴れてくると、すぐそばで眠る彼女の寝顔がぼんやりと見えてきてしまう始末。  だが――。 (ぶはっ。ホント抜けた顔で寝てるな、コイツ……)  そっと身体を起こして荒木羽理の寝顔を盗み見たら、綺麗な顔をしているくせに、ポカーンと口を開いて寝ていて妙に拍子抜けしてしまった。 (……やっぱり口閉じ忘れたカエルだな、こいつは)  なんて思うくせに、それがたまらなく可愛く見えてしまうのだから重症だ。  ただ、その無邪気な(?)寝顔を見て襲う気になれるか?と聞かれたら少し違うなと思って。  大葉(たいよう)はほんの少しホッとする。
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2006人が本棚に入れています
本棚に追加