2006人が本棚に入れています
本棚に追加
/456ページ
ちなみに寝ぼけた荒木に踏まれては可哀想なので、キュウリは今夜だけリビングに置いてあるケージで眠ってもらっている。
幸いキュウリはとても聞き分けのいい子なので、大葉の切ない視線につぶらな瞳で『分かりまちた!』と言わんばかりに応えると、大人しくケージ内のベッドで丸くなってくれた。
だから、いま寝室には本当に荒木羽理と大葉の二人きりだ――。
(襲われるかも?とか微塵も思わねぇのはどういうわけだよ、荒木……)
「俺だって男だぞ?」
聞こえるか聞こえないかの小声でつぶやいてみたけれど、荒木はふにゃりと笑うと「やーん。しょんな大きいの、食べ切れましぇんよぅ……」とか何やら平和な夢を見ているらしい。
「バカ女……」
悔しくなった大葉は、幸せそうに笑う荒木の鼻をギュッとつまんでやったのだけれど。
「ふぎゃっ。……鼻の穴に豆がっ」
なんて言葉とともに、荒木がギュッと大葉の手を掴んで――。
「ジャックと豆にょ木……」
とかなんとか寝言を言いながら、大葉の腕を、まるで豆のツルに見立てたみたいにグイグイ引っ張ってきたからたまらない。
「わ、ちょっと待て……っ」
そんなことをされるだなんて思っていなかった大葉は、バランスを崩して荒木のすぐそばに倒れ込んでしまった。
さすがにコレはまずいだろ!となって、慌てて起き上がろうとしたのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!