8.脳内ライバル

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 弁当用に玉子焼きを焼くついで、朝食用にも作るか……と思った大葉(たいよう)は、解いて下味をつけた卵液を二つに分けると、片側にだけ刻んで冷凍庫にストックしておいた小口ネギを混ぜ込んだ。  彩りも良くなるし、ネギ入りを弁当用にしようと決めて、玉子焼き機を出したところでふと手を止めた。 (アイツ、どのくらい食うんだ!?)  女子社員の弁当箱のサイズは幼稚園児並みに小さいというイメージがある。  だが、昨夜からずっと。夢の中で食べ物の寝言ばかり言っている羽理(うり)が、そんなに小食には思えなくて。  大中小様々な大きさのタッパーウェアを前に、「うーん」と首をひねった大葉(たいよう)だ。 (俺のは当然一番デカイのだが)  というか、普段あまり使う機会はないが、一応……と思って用意してある弁当箱は九〇〇mlの二段タイプ。  下段に飯、上段におかずを入れる仕様だ。  では羽理は――。  どのタッパーもいまいちピンとこないな?と思いながら、更にガサガサと棚の奥をあさっていたら、以前会社の忘年会のビンゴ大会で当たった白木の曲げわっぱの弁当箱が出てきて、コレだ!と思った。  サイズも女性用っぽい手のひらサイズ。 (……小さ過ぎか?)  何となく「お昼ご飯が少な過ぎてお腹がすいちゃいましたぁ」とピィピィ鳴く雛鳥(ひなどり)のコスプレをした羽理の姿が目に浮かんで、別容器に桃の缶詰も入れておいてやろうと思った大葉(たいよう)だ。 (デザートを入れるのに丁度いい大きさのタッパーもあるしな)  残った桃缶は小さく刻んでヨーグルトに混ぜて、朝食に出してやれば喜びそうだ。
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