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色々思いながら鼻歌まじり。
作業を進めていた大葉は、足元にお座りしてじっとこちらを見上げていたキュウリが、カチカチと爪音を立てて向きを変えたのを感じて。
ん?と思ったのと同時、
「……あ、あの……、屋久蓑部長、おはよう、ござい、ます」
恐る恐るといった調子で背後から羽理に声を掛けられた。
「ああ、おはよう」
言いながら振り返ったら、もじもじと所在なさげにTシャツのすそを懸命に下へ引っ張っている羽理の姿があって。
(さすがに一晩寝て酔いが醒めたか)
恥じらいが復活しているところからそう判断した大葉だ。
「よく眠れたか?」
そのはずだと分かっていながらも、あえてそう問いかけたら「何となく頭がズキズキするし、胃もムカムカするので……寝不足かも知れません」とか。
「いや、それ、寝不足じゃなくて二日酔いだろ!」
思わずそう突っ込まずにはいられない。
そんな大葉に、羽理は「あ……」とつぶやいて。
てっきり「ごめんなさい」と続くのかと思いきや、
「そういえば……何で私、部長の家に連れ込まれてるんでしょう?」
なんて人聞きの悪いことを言ってくる。
「っていうか、それ、一番最初に聞くところだろ!」
当然と言うべきか。クソ真面目な大葉は、律儀にそう反論せずにはいられなかったのだが。
それだけでは飽き足らず、
「……倍相課長や仁子の家ならまだ分かるんですけど」
ポツン……と聞き捨てならないことを付け加えてくる羽理に、
「何でそこで倍相が出る!」
思わず、〝仁子〟の部分は華麗に無視して勢い込んで問いかけたら、「だって私、昨夜は課長と仁子の三人で飲みましたもん」と、至極ごもっともな返事が返ってきた。
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