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羽理のために可愛い弁当袋も用意しておこうと密かに心に誓った大葉だ。
(あと、女物の箸もいるな)
今日のところはひとまず棚にストックしてあった未開封の割り箸を忍ばせておいたのだが、羽理用に可愛い弁当用の箸もあった方がいいだろう。
足元でこちらを見上げてくるキュウリに、(うっ、ウリちゃんにも今度可愛いフリルの付いた首輪、買ってあげまちゅからね)と心の中で言い訳をした大葉だ。
だが当の羽理は風呂敷包みや割り箸よりも、弁当箱の中身の方が気になったらしい。
「わぁ~! これ、もしかして屋久蓑部長の手作りですか? ふたを開けるの楽しみですっ!」
風呂敷包みを矯めつ眇めつしながら、目をキラキラと輝かせる。
「ああ。朝飯作るついでに作った。昨夜、朝と昼、作ってやるって約束したからな」
「えっ?」
何の気なしに言ったら、弁当箱を持つ手をフリーズした羽理に、思いっきりキョトンとされてしまった。
(まぁ、分かってたけどな)
酔っぱらった羽理を、ソワソワと大葉が迎えに行ったことも。
一度は彼女の家まで送り届けてやったことも。
もっと言うと危ないから駄目だと言ったのに、酔ったまま風呂へ入ってこちらへびしょ濡れ真っ裸で飛ばされてきたことも。
全部全部すっかり忘れているらしい羽理が、そんな些細なことを覚えているはずがないではないか。
(当然俺の股間に触れて来たことも覚えてねぇよな)
覚えていられても恥ずかしいけれど、覚えられていないと言うのも触られ損な気がするとか言ったら「どっちなんですか!」と叱られるだろうか?
小さく吐息を落としながら「お前、昨夜身一つでうちに飛ばされてきたからな」と言ったら「ふぇ⁉︎」と間の抜けた声を落とされた。
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