9.ワンコパニック

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 余り古いものになると、疑問点が湧いた時、こちらから本人に問い合わせてみても記憶が曖昧(あいまい)になっていることがある。  それに、何よりも羽理(うり)自身が! 帳簿は月毎にちゃんと区切りをつけたいと思っている人間だから、二ヶ月分も溜め込むなんて有り得ない所業なのだ。 「……分からないことがあったら、私が直接本人へ聞きに行ってみます」  プライベートの羽理と会社の羽理はまるで別人。  お仕事モードの羽理は、キリリとした顔でそう告げた。 「あ、ところで荒木さん。今朝もちゃんと服、着替えられてるみたいだけど……借り物?」  何の気なしと言った調子で、倍相(ばいしょう)から話をお泊まり絡みのことに切り替えられた羽理は、フルフルと首を振る。 「着替え、あらかじめ置かせてもらってたので自前です」  そう答えたら倍相(ばいしょう)が「え?」とつぶやいて。 「それは……裸男さんと彼女さんのお宅へは、しょっちゅうお泊まりするような仲良しな間柄って事かな?」  どこか探るような眼差しで(いぶか)しげに問い掛けてくるから、羽理は言葉に詰まった。  だが、ちょうど渡りに船のタイミング。 「倍相(ばいしょう)課長ぉー。屋久蓑(やくみの)部長から内線でーす」  仁子(じんこ)の声に、羽理は答えにくい質問から解放されてホッと胸を撫でおろした。 (裸男、グッジョブです!)  羽理が心の中で大葉(たいよう)にサムズアップしたのは言うまでもない。 ―――――― エッセイに大葉(たいよう)羽理(うり)の住まいの間取りを上げました。 もし気になった方いらっしゃいましたら♥ https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=646 ――――――
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