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「やだぁ! お兄ちゃん、そんな突飛な言い方しなかったから知らなかったぁ!」
実際は〝お兄ちゃん〟こと〝土井恵介〟自身がそのことを知らなかったのだから仕方ないのだが、言いながら盛大に溜め息をついた果恵に、柚子が冷凍庫から取り出した容器を電子レンジへ入れながら「お母さん、恵介伯父さんからの連絡で帰って来たの?」と小首をかしげた。
「ううん、違うわ。お兄ちゃんからは『たいちゃん、結婚を前提に付き合ってる子がいるぞ』って聞いただけ。土恵の社員さんだって言うからお相手の方のお名前と、いくつぐらいのお嬢さんかをちらりと教えてもらったけど、そのまま仕事はこなすつもりだったのよ。だって……そんなに急がなくても結婚する気だっていうなら、いずれ紹介はしてもらえるでしょう? その時を楽しみにしようと思っていたの」
「だったら何で……」
――早退してきたの?と言外に含ませた柚子へ、果恵が小さく吐息を落とした。
「その後に七味ちゃんから『柚子と、たいちゃんの彼女が実家に来てるはずだから、出来れば足止めしてあげて?』って連絡があったからよ」
「ああ、ななちゃんから……」
納得したように柚子がつぶやいたのを聞いて、羽理は思わず口を挟まずにはいられなかった。
「あ、あのっ、私とここにいること、七味さんに伝えたのは……。柚子お義姉さま……?」
柚子はずっと大葉に連絡を取りたがっていた。だから羽理は警戒していたのだけれど、いつの間に?と思って。
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