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それから、美樹さんの兄でもある医者が去っても、俺はしばらく放心状態であったが、急に我に返った時、また失恋した〜! と嘆くよりも、男でもいけるのではと開き直り、変わらずに猛アタックし続け、美樹さんの兄に蹴られる勢いで怒られたのは、また別の話。
──に、させてたまるか!!
「美樹さん! 今度、俺と花火を見ない!??」
「花火·····?」
他の患者に用があり、俺を横切ろうとしたところを呼び止めた。
「そう! ここの部屋からギリ見えるぐらいに花火が見えるって聞いたんだ! だからさ、お願い! 一緒に見てくれない?」
細い顎に手を当てて天井を見上げる美樹さん。
早く決断してくれ。出ないとあの兄が来てしまうかもしれない。
高鳴る心臓を聞きながら祈るように手を組んで、薄い唇から良い返事が来るのを待った。
「··········少しだけなら」
ふんわりと。優しい笑みを向けて小さく言った。
俺は、目をゆっくりと開いた。
「マジ? マジマジで?!」
「きっと、その日も仕事だから、本当に少しだけどね」
「やったぁー!!」
諸手を上げて喜ぶのを、美樹さんは小さく笑っていた。
「このことは、兄には内緒だから」
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