同棲

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翌朝、多田の目覚ましで一緒に起きた。 「…ごめんな」 身体を起こした凛の頭をふわっと撫ぜて、多田は凛の早起きを謝った。 「大丈夫ですよー」 凛は顔だけ洗ってキッチンへ。 多田は朝食を食べないと言っていたから、熱いお茶だけいれてテーブルに置いた。 じゅうじゅう肉巻きを蒸し焼きにしている間に、炊いていた熱々のご飯を少しだけ冷やして。 凛の小さめの手で、3つおにぎりを握った。 しまった海苔がない。 見つけ出したふりかけをまぶしてちょうど、弁当箱の上にぴったり収めて袋にいれた。 冷凍庫の保冷剤も拝借。 そうこうしていたら、多田が準備を終えてテーブルでお茶を飲む。 「匡平さん出来ましたー」 はい、と両手に乗せた弁当を多田に差し出すと、多田も両手で受け取った、 うん、多田の手にはとてもコンパクトだ。 「…ありがとう」 大事そうに、弁当を手に多田が立ち上がる。 「…道、大丈夫?…駅まで歩いた事、ないやろ」 「ふふ、大丈夫です」 心配性だなぁと思いながら、凛は微笑んで多田を玄関まで送り出す。 「気をつけて、安全運転でお願いします!」 「…うん」 「行ってらっしゃいっ、また後で」 ドアに手をかけていた多田が振り返り、ただいまの時と同じにキスを一つ落とした。 「…行ってきます」 多田を見送って、凛も用意に取り掛かる。 駅までの距離を考えて、少し早めに家を出て。 一応島崎が居ないかを確認して電車に乗り、無事に店にたどり着いた。 明日からはもう10分遅く出ても大丈夫そうだ。 「無事到着…と」 多田にメッセージを送っていつもの通り、朝の掃除に取り掛かった。 準備中に中野に報告をしながら手を動かした。 「…今日話しすんですかね、もしかしたら昨日話してる可能性もあるのか…」 「うん、どうだろうね」 「しばらく…俺送りましょうか?」 いつも何処か飄々としている中野が、真剣に凛を見つめた。 「部長、私と多田さんに向かない様に説明してくれるって言ってたし、大丈夫だよ?…ありがとう」 そうですか?と中野が納得しきれていない顔をしているけれど、もし中野に送って貰うことを選んら多田に嫌な思いをさせるかもしれない。 凛の気持ちだけでよろしくと言うのは気が引けたのだ。
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