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「おーい、待てよ朝陽。そんな早足で帰ったところで、まだ夕飯ねえぞー」
ずんずんずんずん。園を出てもなお先を急ぐ背中に、俺は言う。
「転んだら痛えだけだぞ、ゆっくり歩けー」
ずんずんずんずん。
しかし朝陽は、そんな言葉などお構いなし。
「おい、朝陽ってば」
まるで俺の存在すら消そうとするように、彼は振り向きもしなければ返事もしないでただひたすらに道を行く。
「んだよ、もうっ」
ダンッとローファーでコンクリートに八つ当たり、そこへ落とす長い溜め息。
安藤朝陽と安藤桔平。
俺等は兄弟になりきれない。
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