呑兵衛、夏凛の酔いどれ探偵、捕物控 肆 猫飼い村のその後、白天狗の謎

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山奥に逃げていったのもおれば、ここに 残ってお客さんに愛想振りまいて 餌をもらったりしている調子のいい猫もいるで 猫達にとっては良いのか悪いのかわからんがな」 「猫達にとっても、住みやすい、 『猫飼い村』であって欲しいものですね」 「そうじゃな、猫達もこの村を守って 来てくれた歴史があるからな」 「そうだな、白天狗様が山の守り神なら 猫たちは村の守り神じゃからな」 Wじいさんがそんな事を言っていたら、 急に副所長がキャリーの中で起き上がり 上を向いていきなり吠え出した。 「ワンワンワンワン!」 夏凛さんが、猫間じいさんの 懐中電灯を持って外に飛び出していく。 すぐに家の屋根の方に灯りを向けて 何かを確認していた。 僕も、あとを追って外に出る、 しばらく夏凛さんは屋根の方を見ていたが、 戻ってきて、Wじいさんに尋ねた。 「この山には、猿とかはいないんですか?」 「昔はいたようじゃが、 ここ数十年、見たことはないな」 「そうですか」 副所長も落ち着いたようでまたキャリーの中で ゴロンと横になり、またおとなしくなった。 「なんだったのでしょうか」 「りんの吠え方を見るとやはり何かの 動物が屋根の上にいたのは確かだな、 例えば猫、猿、ハクビシンとかそんな 感じの物が来ていたんじゃないかと 思うけど」 「猫、猿、ハクビシン・・・あり得ますね」 「まあ、そのうちわかるさ」 W じいさん達は全然気にした様子もなく 猫だ猫だと言いながら日本酒を 酌み交わしていた。 その夜は僕も夏凛さんも、どぶろくを たんと頂いて、ぐっすりと眠らせてもらった。 副所長も、あれから一度も吠える事なく 寝ていたようだった。 朝を迎えた。 前回ここに来た時から 約一年が、経過している。 前に来た時よりも村の景色が 全くと言っていいほど、変わってしまった。 猫飼さんのお宅は、高い位置にあり 村を見下ろせる。 前の村の道は、Uターンするように クネクネと何度も曲がりながら降りて て下まで行っていたが、そこを全部 削り広い駐車場になっていた。 人が住んでいる家はそのまま残し そこにうまく道を通している。 駐車場にクルマを入れ、後は歩きなのだが 今までのメインストリートもうまく 活用して猫飼さん宅の前まで来ていた。 前回来た山道は、封鎖されている。 人が住んでいない住宅を取り壊し、そこに 宿泊施設温泉以外に日帰り温泉も楽しめる ように銭湯を作り気軽に温泉が 楽しめるようになっている。 猫飼い村の名にちなんで、猫に関する お土産などが多い、中でも人気なのが 猫ちぐらが、よく売れているそうだ。 お年寄り達も、自分でちぐらを作ったり 施設、土産屋での仕事も出来 皆満足しているようだ。
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