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軒先を雨がパタパタと叩く中、開かれた窓の中で口づけを交わす2人。
「……ん…」
ツゥと、糸を引いて唇が離れる。
「大分上手なったな。キス…」
「だって…藤次さんが、こうしろって言うから…」
赤くなり、自分の口紅のついた藤次の唇をハンカチで拭っていると、その手を止められ、また口づけられる。
「もっと気持ちいいこと、したい?」
「…そんなの、ダメよ。昼間から…お隣さんに声、聞こえちゃう。」
「この雨や。声なんて掻き消してくれるわ。せやから早よ。脱ぎ…」
「イヤよ。もうお仕舞い。お茶…淹れ直してくる。」
そうして立ちあがろうとしたら手を引かれ、畳の上に組み敷かれる。
「俺が脱げ言うとんや。脱げや。」
「イヤよ。そんな気分じゃないの。」
「そんなん罷り通る思てんのか?…お前は、誰のもんや?」
「ワタシ…物じゃないわ。況してや、あなたの性欲処理の道具じゃない。」
「なら、なんや…」
プツン…プツン…と、ブラウスのボタンを一つ一つ解かれて行く中、絢音は無機質な顔で言葉を紡ぐ。
「ワタシは、あなたの妻よ。」
「妻なら、夫の求めに応じ。せやないと、無理やり犯すで?」
「…そんな脅しはお止しなさいな。ワタシの嫌がる事、あなたできないもの。そうでしょう?」
「…………」
そうしてしばらく睨み合っていたが、根負けしたのか、藤次は絢音の身体を解放するので、彼女は起き上がり、手櫛で髪を整えて、ブラウスのボタンを締めると、背を向ける藤次にしなだれ掛かる。
「怒った?」
「別に…お茶、取り替えてくれるんにゃろ?早よ、して。」
そうして自分の身体を振り払おうとするので、絢音は眉を顰めて、藤次の眼前に行くと馬乗りになり、トンっと胸を叩いて押し倒す。
「なんね。」
訝しむ藤次を見下ろしながら、絢音は嗤ってみせる。
「誰がしないって言った?あなたにいいようにされるのがイヤだっただけ。さっさと脱ぎなさいよ。それとも、脱がせて欲しい?それとも、このままする?」
その言葉に、藤次はクッと嗤って、彼女の細い首に片腕を回して引き寄せ、激しく深くキスをする。
忽ち腰が砕けて、真っ赤な顔で胸元に縋りつき俯く絢音を満足げに見つめながら、藤次は耳元で囁く。
「俺を手玉に取ろうなんて、1000年早いわ。お子ちゃま。」
そうして藤次は、再び彼女を組み敷き、雨垂れの激しさの増した昼下がり、2人は密やかに、身体を重ねた。
【終】
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