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今すぐ目を逸らせー!このまま死にたいのかー!と、心の中の俺がメガフォン片手に死に物狂いで訴えている。
心臓が破裂しそう。芝崎が格好いい。本当にヤバイ。
咄嗟に距離を取ると、その行為が不自然に思ったのか、一瞬だけ顔を顰めた芝崎の表情が見えた。違う意味で心臓が高鳴る。
…芝崎に怪しまれたな。でもダメだ。誤魔化しきれないくらい動揺している。だって…かっこいいし。こんなの惚れない奴なんていないだろ。
「悪い。今すぐカメラ向けるから」
急いで芝崎が向けてくれたスマートフォンへカメラを向ける。すぐにコードを読み込むが、「倉木」と、芝崎の自分の呼ぶ声に画面を確認する前に顔を上げた。
すると、顔を上げた拍子に前髪に手を伸ばしてきて、額が全開になるくらい前髪を上げてきた。
「な…んの真似?」
突然のことに驚きすぎて変に冷静に聞き返してしまった。芝崎は何かを探るような目線のまま顔をジッと見つめている。本当なら叫びながら飛び跳ねたいくらいだ。芝崎って距離近いの癖なの?
「いや?もしかして倉木の顔をしっかり見たら美青年だったとか、そういうオチなのかなって思ったけど、ただの倉木だった」
うん、とりあえず褒められてないのは分かった。けど芝崎が何を言ってるか、何がしたいのか、本当に分からん。
「芝崎の意図が分からない」
「さっき俺から距離取っただろ?なんで?顔見られんのが嫌なのかなと深読みしたけど、別に隠すような顔でもないし、覚えるのに時間かかりそうなくらい何処にでもいそうな地味な顔だから違うか。あ、だからこそ見せれる顔じゃないとか思って避けた?」
グサッ。勝手に話作られた上に突然の煽り。否定出来ないのも辛い。俺が一番知ってる。けど見せれる顔じゃないって…そこまで言わなくても。一応、俺も今を生きてるんだが。しかも距離を取ったのバレてたし。そして不審がってる。マズイ。
「…別に避けたつもりじゃないぞ」
「じゃー、おでこ触られんの嫌いとか?」
おでこって言った?芝崎って額の事をおでこって言うのか…しかも首傾げてる姿が可愛いなこの野郎…。
「触れるのは嫌では無いけど、誰だって芝崎に見つめられたら後退りたくなるよ」
「はぁ…なんで?」
「え…無自覚?自分の顔の良さを理解してないのか?」
「あぁ、そういうことか。それなら生まれた時から散々言われてきたから理解してる」
初めて見る満面な笑みは、腹が立つ事すらも掻き消してしまう。そりゃそうだ。こんなに顔が良くて、そんなこと無いって否定するのも嘘だって分かるくらいの良さだ。
「倉木もそう思ってるんだな」
「学校中の誰もが同じ事を思ってる自信があるよ」
「それより倉木は俺と仲良くなりたいのに、そんなんでいいのか?」
「え?」
芝崎は突飛な行動が多いらしい。またもや突然に俺の右手首を掴んできた。ギクッとした時には引っ張られ、後退った分の距離を縮められる。芝崎との距離が縮まる度に、俺の寿命も縮まっている気がする。
「友達同士って分け隔てないもんだろ。俺の顔の良さで距離取られてたら友達になれない。…本当に俺と友達になりたいわけ?」
真意を探るような眼差しが、まるで心情を見透かされているようだった。
「…うん。芝崎の顔は綺麗で後退りたくなるけど、これから仲良くなって友達になれればなと思ってる。自分で言い出した事だし」
俺はこんな事が出来るんだと思った。負けじと右手を引き戻すと、驚いたように目を丸くした芝崎の顔が更に近づく。ピタリと胸がつきそうになるくらいの距離に、自分を奮い立たせるようにグッと身体に力を入れた。
俺は腹を括るしかなかった。ここで変に動揺したり、言い訳のような事を並べた方が余計に怪しい。気持ちを知られて高校生活に支障をきたす方が問題だ。だから偽る方を選んだ。これを貫き通そうと思う。何考えているか分からないが、いつか来るであろう芝崎の“飽き”を待つだけだと思えばいいんだ。
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