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「……あのね。オカルトって言われても、しょうがない話なんだけど。笑わないって約束する?」
「うん、約束する」
「これまで、だれにも話したこと、なかったんだけど……」
愛子は、語った。
透子さんは、亡くなる日の夜。
部屋に愛子を呼んで、こう言ったらしい。
ねえ愛子。
わたし、今日死んじゃうみたい。
あのね、わたしのクラスに青崎剛くんって男の子がいるの。
その子と、愛子、結婚するから。
青崎くんは、愛子のこと幸せにしてくれるから。
わたしね、青崎くんに頼んでおいたから。そう約束したから。
だから、わたしがいなくなったら……青崎くんと、仲よくなってね。
だいじょうぶだよ。
紆余曲折あって、ふたりは、結ばれるみたいだから。
タキシード着た青崎くんね……かっこいいから……。
なに言ってるの、とその晩の愛子はまともに相手にしなかったらしい。
それどころか。
「なにかの小説から影響受けた妄想? とか、あたし、言っちゃって。最悪だよね。お姉ちゃんが死ぬこと、わかってれば……でも、そんなのさ、わかんない……わかんなかったじゃん……」
でも、透子さんはやっぱり笑顔で、妹に言ったのだという。
『――あまおとこるね』
『今度は、なにそれ、お姉ちゃん。もういい? あたし、昼間サッカーしすぎて眠いんだけど』
『うん、おやすみ。愛子。……だいすきだよ』
『なあに、もうお姉ちゃん急に、きもちわるいなあ……』
そして、愛子は部屋から出て。
透子さんは眠りについて――透子さんの心臓は役目を終えて、透子さんの十四年の生涯も、終わった。
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