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初恋のひとと、愛するひと
俺は山岸透子に恋をしていた。
中学二年生。
初恋だった。
一学期最後の席替えで彼女が隣の席になったのは奇跡だと、本気で思った。
『席、となりだね』
『あ、うん』
彼女のほうから話しかけてくれたのに、そんな反応しかできなかった。
『えっと、青崎くん』
『そっちは、山岸さんだよね』
『そう、でも山岸っていうとややこしいね』
『B組にもいるから?』
そうそう、と彼女は笑った。
B組の山岸は「山猿」というあだ名で有名だった。
そんなあだ名がつけられるほど、よくも悪くも活発すぎる女子だった。
俺が好きなのは、山岸透子さんみたいな女の子だった。
長い黒髪がとんでもなく似合っていて。読書が好きで、図書委員で、国語の成績がよくて、語彙が独特で。どこか儚くて。でもどこか、芯が強くて。
『ずいぶん、雰囲気違うよね。……双子なのに』
『双子って言っても私と妹は、二卵性だからね。ふつうの姉妹みたいなものだよ』
そう言って、彼女は笑ったが。
B組の「山猿」と山岸透子さんが双子だなんて、そのときには信じられなかった。
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