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結婚式当日
結婚式場に選んだチャペルは、庭園の緑が豊かなことも決め手だった。
チャペルは洋風なのだが、庭園は和風。祠なんかもあり、趣があった。
ジューンブライドがいい、と六月を選んだのだが、さすがは梅雨。
今日はあいにくの雨だった。
昼過ぎには止むだろうと予報はあったが、俺たちの式は午前中だった。
「新郎様。ご移動をお願いいたします」
式場のひとがやってきた。
いよいよだ……リハーサル通りに、うまくできるだろうか。
あ、やばい。緊張してきた。
「す、すみません。ちょっとトイレに行ってきていいですか」
「もちろんでございます」
微笑む式場の人に、そこはかとない申し訳なさを感じながらも、俺は早足でトイレに向かう。
ひとりになって少し落ち着いてから式場に向かいたかった。
シャンデレラの多く垂れ下がる、華やかな結婚式場の廊下を進む。
トイレに向かって角を曲がろうとしたら、すすり泣きが聞こえてきた。
俺は足を止める。
女子トイレの出口付近の壁。
愛子が、壁にすがりつくように、泣いていた。
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