ⅡⅩⅢ 宿縁。

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 官能の波に堪えられなくなったマライカが甘い声を上げると、ファリスは後頭部を固定して口角を傾ける。より深い口づけへと変化した。  彼へと引き寄せられれば胸が歓喜に震える。自分の居るべき場所こそ彼の腕の中なのだとマライカの本能が――心が告げている。  マライカはファリスとの口づけでもう何も考えられなくなっていた。腰が勝手に揺れて身体が密接する。骨張った手がマライカの臀部を包む。互いの下肢が布を通して触れ合うのを感じた。  身体を覆う布が邪魔だ。マライカは彼の雄々しい肉体を感じたかった。口内ではファリスの舌が我が物顔で動き回っている。抑えきれない熱に翻弄されるマライカは腰を上下に揺らし、この先に待っている行為を強請った。  やがて口づけが終わりを告げ、離れる間際に聞こえたリップ音が耳に残る。マライカを支える唇が消えたことで全身から力が抜け落ち、腰が抜ける。すると倒れそうになった身体を彼が支えてくれた。  時を刻む秒針と乱れた呼吸が沈黙の中に覆った。マライカはファリスの腕の中で息を整える。どうにかして呼吸を整えようと思うのに、しかしそれも彼への想いが阻む。  やがてマライカの乱れた呼吸はしゃくりへと変わる。  あれほど泣くまいと決めていたのに涙袋に溜まった涙が堰を切って頬を伝い、嗚咽が漏れた。 「ど、うして……」 (こんなに想っているのに……)  心がこれほどまでに彼を欲しているというのに離れなければいけないのだろう。
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