ⅡⅩⅢ 宿縁。

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「マライカ、俺が間違っていたんだ。盗賊だから純粋な心を宿す君とは釣り合いが取れないと身を引こうとした、俺が愚かだった。君が幸せならそれでも良いと思ったんだ……だが、俺は君を求めている。自分が何者かを考えるより、もっと大切な事があったのにな。先ほどの口づけでさらに確信した。俺の心は君を求めている」 「ファリス……?」 (ぼくと同じことを考えていたの?)  だってそれはマライカだって同じだった。ファリスと口づけを交わした時、たしかにファリスへの深い愛を思い知ったところだった。  ファリスの言葉に、マライカの心が揺れた。  けれどもダメだ。ファリスの傍にいれば、自分は必ず彼を不幸にする。自分なんかが一緒に居ていい筈はないのだ。 「貴方にはぼくよりももっと相応しい人がいるはずです。ぼくじゃない。ぼくじゃないんだ………ぼくじゃ……」  想いとは反対のことを口にすれば、ふたたび涙が零れ落ちる。  マライカは首を振って別れを告げる。 「マライカ!」  身体が揺すられる。  求められれば求められるだけ、マライカは胸が引き裂かれそうな痛みと戦わなければいけなくなる。しかしそれも限界だった。  だって、マライカもファリスを想っている。――いや違う。愛を告げてくれた彼以上に、マライカは彼を愛している。  だからもうこれ以上は嘘を言えなかった。 「……ぼくだって、同じ気持ち。貴方の言うとおり、お腹の子は貴方との間にできた子です」 「マライカ、ならば――」
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