ⅡⅩⅢ 宿縁。

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 ファリスと見合わないことは自分が一番知っている。  だけどせめて……。  ほんの一時でも良い。  ファリスに求められている一時だけでも、側で寄り添うことは可能だろうか。 「貴方の傍にいたい。それが叶わないなら、せめて身体の関係だけでも……」  できるなら、一人だけじゃなくてもっとたくさんの彼の子を授かりたい。オメガである自分は発情期になるたびに誘惑を繰り返すだろう。ファリスがマライカを拒否するまで――。  だけどファリスが飽きる日はすぐに来る。明日かも知れないし明後日かもしれないのだ。  それでも、マライカの中には彼との間に授けられた子供がいる。  やがて生まれてくる子供はきっとファリスに似ているだろう。強く、優しく、とても頭の回転も早い子ばかりになるだろう。そしてマライカは、彼の面影に似た子供たちと共に生きる。  オメガの自分だけれど、愛している人との間にできた子供をきっと幸せにしてみせる。  それだけでいい。今は、まだ。たとえほんの一瞬だけでもファリスと過ごせるのなら、それだけで十分だ。  だからけっして彼から永遠の愛を注がれたいと思ってはいけない。 「マライカ! 頼むから自分を卑下するのはやめてくれ。俺が欲しいと思うのは君だけだ。これから先も君しか抱かない。君こそが俺の宿縁だ」  揺るぎないファリスの言葉に、マライカはとうとう泣き崩れてしまった。けれどもその涙はけっして悲しいものではない。そして彼のたくましい腕の中で、これから先に待っているだろうマライカ自身が切望していた幸福な日々がやって来ることを感じて大きく胸が高鳴った。 《宿縁・完》
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