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なんとファリスは再会のあの日より僅か3ヶ月程度ですべてを片付けてしまったのだ。マライカも他人事ではないので手伝うと言ったものの、することといえば衣装合わせや当日の流れを決める程度。しかしファリスひとりの力ではどうにもできないことだということも知っている。ともすれば、彼の仲間を巻き込んだに違いない。それがまた、マライカにとっては信じられなかった。なにせいくら主の頼みだからといって彼らは敵とみなしていた。ジェルザレードの民は皆、マライカたちの王都近くに住む人間を嫌っている。
マライカの一生をかけて自分とこれから生まれてくる子供を受け入れてもらえるよう努力するしかないと考えていたのだが、どうやらそれは気苦労に終わったらしい。
ファリスとハイサム盗賊たちの寛大な処置を施したワーリー王の評判はうなぎ登りに上がっているのだ。
そして、身を挺してファリスを救おうとしたマライカの行動もまた、なぜか伝わっているらしい。噂とはどこまで広がっていくのか。
「ああ、楽しみね! ジェルザレードの麓には元盗賊さんがいらっしゃるんでしょう? きっと色々な冒険話を聞かせてくれるわね! 4日とはいわず、ずっとお世話になっちゃおうかしら」
「おいおい、メイファ。ふたりきりの時間をもっと尊重してあげないか……」
「いえ、お父上。ご両親が一緒だとマライカも安心でしょうから、どうぞ時間の許す限り側にいてやってください」
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