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「まあ! ファリス様はとてもお優しいのね!」
「メイファ……」
「わかってるわよ! でもねマライカ、いつでも使いを寄越して頂戴ね」
「はい、母様」
メイファは誰よりも物語が好きで、未知のものを知りたがった。そして思いのほか図太い。セオムは頭を振って好奇心旺盛な彼女に困惑していた。メイファはもとより、初めは結婚に反対だった父セオムにしてもたいそうファリスを気に入っている。
好奇心旺盛な母に堅実的な父。対照的な両親の反応にマライカとファリスは顔を見合わせ、苦笑を漏らした。
「おめでとうございます!」
間もなくしてジェルザレードの麓にある、元ハイサムのアジトに辿り着いたマライカは駱駝から下ろされた。漆黒のアバヤが解かれ、純白の衣装が現れる。
マライカの隣には最愛の人、ファリスがいる。差し出された彼の腕に自らの腕を絡め、人々が作った道を進む二人の頭上には純白の花、ジャスミンがシャワーのように降り注いだ。
幸せで胸がいっぱいだ。マライカが夫となるファリスへ視線を上げると、視線が重なった。ファリスの瞳は太陽の光に照らされ、優しいアンバー色になっている。目を細められれば胸が高鳴り、頬が染まる。どんなに両想いになっても、どんなに一緒に過ごしたとしても、この胸のときめきは一生治まりそうにないと、マライカは彼への想いの深さをあらためて思い知る。
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