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目の前にはワーリー王が立っているではないか。まさか彼が仲人をするとは思いもしなかったマライカは腰が抜けてしまいそうなほど驚いた。後になって知ったことだが彼の右腕であるヘサームはお忍びでよく街中に現れるのだとほとほと困り果てた様子で頭を抱えているのだそうだ。
「マライカさま、ファリスさま。ご結婚おめでとうございます。そしてマライカさま、ご両親さま、ようこそジェルザレードへ!」
ターヘルはカゴいっぱいに入っているジャスミンの花をふたりの頭上に舞い上がらせた。満面の笑みを浮かべている。
やがてふたりは王の前で向き合った。
「この先何があろうとも、俺の心は変わらない。永遠を君に捧げることを誓います。俺の月、君は俺の道標だ」
ファリスが近いの言葉と共に愛を告げ、ベールをそっと後ろへ撫でつける。マライカは目を閉じ、顔を傾けると彼から与えられる誓いの口づけを交わした。
そこは古代から続く人々の絆を生み出すジェルザレード。そしてこの地を守るファリスこそが自分の居場所であり、楽園。
――ここは人々によって築き上げられた、幸福の街。
《Fin》
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