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そんなアブリヴィアンが他の国々と異なっているのは、大きな海岸線がふたつもあるというだけではない。大陸の中央にある砂丘もまた、恐ろしく広大で珍しいものだった。
スーリー砂漠である。このスーリー砂漠は呪われし魔の砂丘と呼ばれ、民たちは恐れていた。そのため、滅多に人通りはなく、黄金の砂地が広がるばかりだ。
スーリー砂漠が魔の砂丘と呼ばれる由来はマライカたちの祖先、アウヤール人にあった。古代アウヤール人は皆、魔力を持ち、日々を暮らしていたという。
しかしある日を境に天候を操る智慧さえも手に入れた。そのため、神々の怒りを買い、以来この地は砂丘と化してしまったという、古い言い伝えが存在していた。だからこの地はいかに雨が降ろうと食物は愚か植物さえも生えないのだ。
そんな呪われし砂丘を、今まさにマライカは数えるほどしかいない僅か数人の従者を引き連れ、横断していた。
彼の目的地はアルシャ湾に面した地域だ。
マライカはアバヤと呼ばれる、漆黒の布を身に纏い、髪さえも見えない黒のベールで頭を覆う。しかしたとえ身体が漆黒で覆われようとも、陶器のように澄んだ肌は隠せない。アバヤの袖から流れ出る指は細く繊細で、剥き出しになった顔は艶やかな表情を覗かせていた。
本来ならば男性は白のシャツにカンドゥーラと呼ばれるマキシ丈のローブを羽織り、腰に布を巻き、頭には肩にかかる長さのクゥントラを被るのではあるが、しかしマライカは違った。
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