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彼はなんとオメガの性であるマライカを貰い受けたいと告げたのだ。
こうしてマライカは泣く泣く顔も知らない大富豪、ダールの元へ嫁ぐことになった。
そんなマライカだが、実はかねてより好きな人がいた。
出逢いはほんの数週間に遡る。ダホマという酒場で働いていた友人が風邪で倒れ、代わりにマライカが働くことになったのがきっかけだ。
酒場で配給係をしていたマライカは、オメガという性も関係しているのだろう。その容姿からすぐにお客の目を惹いた。酒に呑まれたお客は手癖も悪く、始末に負えないのがいけなかった。
マライカはあっという間に客たちに絡まれ、身ぐるみをすべて剥ぎ取られそうになった。
誰も彼もがいやらしい視線をマライカに送る中、けれどもたった一人。彼だけは違った。
大勢から降り注がれる好奇の目から、ひとりの男性が助けてくれたのだ。
彼こそ、マライカの想い人である。
マライカも背は高い方だが、彼には負ける。身長はおそらく190はあるだろう。
年齢は25歳あたりで、すらりとした長い手足に余計な肉づきのない引き締まった若々しい肉体。太陽に愛されている小麦色の肌は張りがあり、緩やかに波打つ黒髪。鋭い漆黒の目とは対照的に、高く整った鼻梁の下にある分厚い唇はとても甘い雰囲気を醸し出す。
同性でも見惚れてしまうほどなのだ。甘いマスクの彼はさぞや女性に人気があるだろう。
彼はマライカが友人の代わりに働くことになったその日から、何気なくカウンター席に座り、また襲われないようにと見守ってくれた。
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