ⅡⅩⅢ 宿縁。

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「こんな想いをするなら、逢いたくなかった」 (いっその事、ファリスと出逢わなければ――こんな悲しみも胸が引き裂かれるような苦しみも、知ることはなかった――)  マライカは涙を流し、蹲る。  絶望と深い悲しみの真っ直中――。 「愛している」  それは唐突だった。  彼はマライカに愛を告げた。ファリスはマライカに息を整える隙さえも与えなかった。 「……なにを……」  マライカは驚きを隠せなかった。  だってまさか彼の口から愛なんて言葉を聞くとは思わなかったからだ。  きっと聞き間違いだ。自分にとって都合の良い解釈をしているだけだ。そう思い込もうとしていた。それなのに――……。 「マライカ、愛している」  彼はふたたび口を開いた。  驚くマライカは泣いていたことも忘れ、目の前にいる端正な顔立ちをただ呆然と見つめていた。 「共に暮らそう、マライカ。君のお腹の中に俺の子がいるんだろう?」 「いいえ、いいえ。この子はファリス様の子ではありません」 「マライカ! 王に偽りを言ったのか? その身に宿している子は誰との間にできた子だというんだ? ――いや、そんなことはどうだっていい。王に嘘を言ってまで俺の処刑を止めさせようとしたのは何故だ?」  マライカは両目を閉じたまま、何も答えなかった。――というか、どう答えればいいのか判らなかった。少しの沈黙が続く中、またファリスが口を開いた。 「いや、そんなことはどうでもいい。たとえ、そのお腹の子供が他の奴との間にできた子でも構わない、俺は――」
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