どこかの物語

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同じ部屋、同じ模様、同じ天気、同じ僕 同じ風景がただ流れる 時計は回ってないし、朝も夜も来ない かと言って昼って訳でもないんだろう そんな世界で、僕は何度目かの起床をした 変わらない世界、変わらない僕 競い合ってるわけじゃないんだからさ そろそろ世界よ回ってくれって思う カレンダーはもう何周もしていいはずなのに 1枚もめくれていない なんにもしたくない、そんなこの頃 外は馬鹿みたいに晴れ 窓から見える太陽 僕を焼いてくれ、なんて… 僕は項垂れた "コンコン" 玄関の方から音が鳴る 「…お客さんかな、はーい!」 僕は布団から起き上がり歩く 扉を開け、その長い部屋をまた歩く その後ろにはこれでもかっていうくらいの本が飾られていた ☆ 「こんにちは、こないだの続きが気になっちゃって…」 彼女はふふふと笑う "ありがとうございます"といって"それ"を貸し出す 「そういえば…」 彼女が口を開く 僕と彼女はたわいも無い世間話をした 頭の中で思う もし、"今日"が動いたら、彼女はもうここへは来ないだろうか? そう思うと、世界よ回らなくていいと思ってしまう ただ、ほんの少し、少しの気持ち 変わらない僕と変わらない世界 そこに変わらない彼女がいてくれたらって 彼女は笑顔で帰っていった なんにもはじまっていない これは物語の序章にもならないだろう こんな期待は馬鹿みたいだ 「ひねくれてるなぁ」 独りごちる。 彼女がくるのは、もう何度目か カレンダーは今日を指しているけれど、進んでないだけ 「にゃぁ」 飼い猫がスリスリと、ひと鳴きしてやってくる 「お前は呑気だなぁ」 寝転がる猫のお腹をなでる このふわふわで眠ってしまいたい… 「………ハッ」 いやいや、だめだ。 つい、ウトウトと… 最近、なんにもすることが無いせいか それとも太陽が馬鹿みたいに歌っているせいか それとも単純に猫のお腹がふわふわのせいか すぐ眠ってしまう 「……」 視線を感じ、猫を見ると、僕を凝視。 「いや、けしてお前のせいにはしてないよ」 違う、断じてしてない、気の所為だから。 他人のせいにはするなということだろうか、 反省。 何も始まらない世界 "今日"はいつまでつづくのか 僕はペラっと本をめくる ペンを取った。 「さて、"今日"という物語をどう書こうか」 この物語を、彼女はまた読みに来るだろう その時は、僕から声をかけてみよう 窓にはあおい空が これでもかってくらい塗られていた
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