第二話「人気者の姉は、鏡を割る」

1/1
前へ
/3ページ
次へ

第二話「人気者の姉は、鏡を割る」

(Lorri LangによるPixabayからの画像 6903a413-a79c-4d9e-ae11-736b44b4ed08)  先生から応募条件のプリントをもらった帰り道、文芸部員の私たちは、ちょっと興奮して話しあった。 「何を書こう!」 「まず主人公を決めなきゃね」 「字数も決まってるもんね」  私は家に帰ると、部屋でノートを開いた。  主人公はちょっとグズなカラスにしようと決めていた。ためしに何行か書き、余白にカラスの絵をつけた。  よし、書けそう。  そのとき――。  後ろから真奈の声がした。 「あ、カラス。かわいい」  私はさっと字を隠した。  真奈は眉のあいだにシワを作り、 「見ないわよ、そんなもの」  私は真奈を無視して、夢中で書き続けた。書くうちにどんどん言葉があふれてきて、ノートが走り書きの文字で埋まっていった。  言葉が、勝手に踊りだす。  髪の上の文字が、ダンスを踊るようにかろやかにお話が進みはじめた。  私は夢中で書き、書き、書き、まわりを忘れるほどに書きまくった。  どれくらいの時間がたったんだろう。  ふいに――バリッ! と鋭い音が聞こえた。  あわてて顔をあげる。視線の先で、真奈がお気に入りの手鏡を割っていた。  粉々にしていた――。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加