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第二話「人気者の姉は、鏡を割る」
(Lorri LangによるPixabayからの画像 )
先生から応募条件のプリントをもらった帰り道、文芸部員の私たちは、ちょっと興奮して話しあった。
「何を書こう!」
「まず主人公を決めなきゃね」
「字数も決まってるもんね」
私は家に帰ると、部屋でノートを開いた。
主人公はちょっとグズなカラスにしようと決めていた。ためしに何行か書き、余白にカラスの絵をつけた。
よし、書けそう。
そのとき――。
後ろから真奈の声がした。
「あ、カラス。かわいい」
私はさっと字を隠した。
真奈は眉のあいだにシワを作り、
「見ないわよ、そんなもの」
私は真奈を無視して、夢中で書き続けた。書くうちにどんどん言葉があふれてきて、ノートが走り書きの文字で埋まっていった。
言葉が、勝手に踊りだす。
髪の上の文字が、ダンスを踊るようにかろやかにお話が進みはじめた。
私は夢中で書き、書き、書き、まわりを忘れるほどに書きまくった。
どれくらいの時間がたったんだろう。
ふいに――バリッ! と鋭い音が聞こえた。
あわてて顔をあげる。視線の先で、真奈がお気に入りの手鏡を割っていた。
粉々にしていた――。
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