あの子の家族が語るあの子のこと1

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あの子の家族が語るあの子のこと1

「オルミくんはユピの養子のような関係だから、親しいと思っていいんだよね?」 「親しいというなら家族だから…」 ユピといま住んでいるのなら、ムッピが知りたいことが分かるはず。 「ボクの方からもききたいけど、ムッピさんはユピさんと明らかに関係…あるはずだよね」 「体毛の色が違うだけで、ムッピさんもユピさんも目の色が同じで姿が似ているもの」 そりゃ似ているはずだ。 「ムッピはユピの双子」 「やっぱり!」 ムッピの体毛は黒色だが、ユピは桃白色である。体毛以外は目玉の色も同じ茶色で、表情以外は顔も同じ。 ちなみに小動物的姿で生まれた他の兄姉たちも、みんな見かけは真ん丸珍妙で似ているが。甥っ子姪っ子世代は小動物的姿で生まれると、ムッピたちのような見かけにお尻に尻尾が生えている。 「ムッピさんは双子のユピさんに会いに来たの?」 オルミくんはムッピがネレウタラシュのカヌイラ島に来た理由を、そう解釈したようだ。 ムッピは首を振り、オルミくんの見解を否定する。 「ユピに会いたいけど、ムッピは直接会えないの」 「え、ケンカ…しちゃって気まずいとか?」 心配そうな顔で、オルミくんはムッピを見る。 「そういうんじゃなくて…会えないんだ」 さらに困り顔になったオルミくんに対して、自分がどうしても確かめたいことをきく。 「あのね、教えてほしいんだ」 「教えてほしいって…」 両手を握りしめ、心臓をドキドキさせてオルミくんに言う。 「ユピは、いま幸せですか?」 ♦         ♦         ♦ ユピと一緒に暮らしているというオルミくんに、ユピが幸せか尋ねた。オルミくんの顔を真剣に見つめて、彼からの返答を待つ。 「幸せ…」 オルミくんは右手の人差し指を下唇に添え、ムッピの問いについて考えこんでいる。 ユピが幸せなら率直に答えが返ってくるはず。返答に間が空くなら、それはー。 「不幸ではないかもしれないけど…、ユピさんは幸せとは言い切れないと思う」 オルミくんが答えてくれた内容は、不幸か幸せかどっちかつかずのものだった。 「完全に幸せではなさそうって、何かそう思う理由があるのっ?」 「ある」 「ユピさんボクが小さい頃から、時々一人になると暗い顔で沈んだ感じになることがあるんだ」 オルミくんはうつむいて、自分の上衣の裾を両手で握りしめる。まぶたを伏せた顔は、少年の辛い心情を伺わせた。 彼が見ていて胸が痛くなるユピの様子。 ー失敗して落ち込んだりすることはあるかもしれない。それ以外はもう悲しいこと淋しいことのない毎日を送って、生きていた頃より幸せになってほしい。ー ムッピのいままでの一生で真に望んだことは、ユピの幸福だけだった。 オルミくんが話してくれた光景を想像すれば、ムッピの願いは…叶っていない。
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