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序章
自分にとって何より大切な存在が生まれながらに孤独であることを強いられ、死ぬまで狭い場所に閉じ込められる運命だったら他の誰かは一体どうしたのだろう。
大切な存在を救い幸せにするために、どんな選択をするのだろう。
ムッピは双子の片割れであるユピが一番大好きで、父さんよりも母さんよりも、他の兄姉たちよりも大事で愛しかった。
母さんのお腹にムッピとユピは一緒に宿ったのに、時間が満ちて産み落とされる前にユピはムッピの隣から引き離された。
そして、暗く淋しい結界の中に入れられて…。
ユピの呟いた言葉が、いまもムッピには忘れられない。
『ユピが、この世にいる意味ってなんなんだろうー』
『誰にも触れなくて、側にいられなくて、一人でここにいるしかないのに…』
『ユピが生まれて生かされているのは、一体なんのためなの?』
『このまま消えて、なくなってしまいたい…』
会いに行けばムッピの前ではユピは自分の境遇を嘆くことはなく、いつも笑顔を見せて迎えてくれた。
ムッピが去り一人になったユピがすすり泣きながら、漏らしこぼした哀しい本当の心。
ムッピはユピのために、何かしてあげたかった。
生まれる前から生まれてからも心から祈り願うのは、「ユピが幸せになる」ことだけ。
ユピの幸せにつながるのなら、どんなことだってする。
だから、ムッピは、ああすることを自分で選んだ。
ユピがムッピの選んだ道を知ったら、悲しませることが分かっていても。
自分ができるユピを救う方法は、それしかなかったんだ。
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