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「はぁぁ……やっと解放されたー!!!」
「確かにな。浩然が来てから余計長く感じた。この後どうする?」
「え、何が。」
居心地が悪い場所に居た所為もあって何かと体力を消耗した梓豪にまともな思考能力なんて残っているはずもなかった。
「いや、昨日のさ。任務で消耗した道具とか新調したいなって。だからいつものところの行きたいなーって。」
「わかった。俺今究極に眠いから運転変われよ?」
「わかった。」
未成年が運転はしちゃいけない、そんなことはこの国では適応されるわけもなかった。
「車の中あっちぃな。」
「なんで影があるとこに止めなかったんだろう。」
「まじでそれ。」
薄暗い地下から出た二人を地上はまぶしく迎え入れた。武器の調達のために車を動かそうとしてドアを開けた。当然、夏の中盤の日差しというのもあって車内はありえないほど蒸していた。
「ちょっとエンジンかけて冷やしておこうか。入れないだろ。」
「そうするか。ま、その間に上着脱ごうぜ。暑さで軽率に死ねる。」
「だな。」
じめじめした地下の中を黒スーツで歩き、地上に出たと思ったら嫌味のように光っている太陽。黒は光を集めてしまうから少しでも抗うために上着を脱いだ。
「もうさすがに入っていいだろ。」
「入るか。」
炎天下の中、黒い上着は光と熱を集め、それだけで二人の体力を消耗させていた。
しかしそれももう終わり。数分間エンジンフル稼働させて中を冷やしたのだ。直射日光を完全に防げるわけではないが外で立っているよりは幾分マシになるだろう。
「涼しい……」
「幸せー」
冷たい室内に入って気が緩んだのかさらに思考能力が低下した二人に活動気力は残っていなかった。
「運転しなくていい喜びと体温管理ができて非常に我満足なり。」
「よかったな。まぁ、でもシートベルトはしてくれ。」
「わかったー」
相方がシートベルトをしたのを確認して、車を動かした。
「着いたぞ。」
「んあ?どこに?」
「いつもの。道具の調達に来たんだろ。」
「そっか。」
「行くぞ。」
あの場所から十数分車を走らせ、とある裏路地に向かった。そこは先ほどのような薄暗さを残しつつも明るい場所だった。
カラン
アンティークを感じさせるベルの音を店の中に響かせた。
「いらっしゃい。」
ベルが余韻を残して消え去った後にカウンターでウイスキーを煽る店主に出迎えられた。
ウイスキーの香りが店に満喫しているのもあって店内は独特の空気を作り出していた。
「今回は何の用だ?」
酔っているのかとげとげしい言い方に圧がかかっている。そんなものは言われなれているはずなのにそれでも気圧される。この店主の言い方は俊煕をひるませた。
「修理と新しいナイフの調達に。」
できるだけ声を震わせないように口角を上げて話す。
「そうか。で、梓豪は何をしに来たんだ?」
「俺は同じくナイフを買いに。この前の折れちゃったから。」
「フン。相変わらず軽い物言いをするな。まぁ、好きに過ごせ。」
「そりゃどうも。」
この店の店主は愛想がない。もちろん営業スマイルなんて概念はない。確かに営業では笑顔が必須だ。だが、この店ではそれをする必要がない。なぜなら非合法な危険物、薬品を多数取り揃えているからだ。もちろん一般で利用されることもない店だからか顔なじみが多い。
「何を直してほしいんだ?」
「これです。」
水を飲むかのようにウイスキーを飲み、店主は俊煕が手元から出した小型銃をなめるように見た。
「破損してやがる。一体どんな使い方したらこうなるんだ。」
思ったことはすぐ口に出す。店主はそんな性格だった。もちろん悪意はない。
「あはは。弾入れで戸惑ってたら相手にピンポイントで破壊されました。」
この前の任務の時に相手側の手下が死角を突いて弾入れの際に壊したのだ。当然その銃は使い物にならなくなり現在に至るのだが。
「いい加減にしやがれ。」
苛立ちと呆れを交えたような声に苦笑いしか出ない俊煕だった。
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