部室に残る天気雨

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知ってるさ、と思う。 全部知ってるさ、と思う。 誰が誰に何を思っていて、自分がどれだけ蚊帳の外にいるのかってことも。 窓を閉めていてもはっきりと聞こえる、夕立のくせになかなか降り止まない雨の音を聞きながら、雨の名前を持つ先輩を想う。 握りしめていたパピコは中身が少し溶けて、力なくふにゃふにゃになっている。こうなると、もう素手で先っぽを千切るのは難しい。  知ってるさ、と思う。  でも。想う自由くらいあったって良いはずだ。陽向先輩に負けないって思ったって、良いはずだ。 パピコのリングに指をかけて、雑念ごと引きちぎる。溶けかけの中身を握りしめ、玲音先輩を想いながら一気にちゅーっと吸い込んだ。  ふと、玲音先輩が残していったパピコの先端が目に入る。僕はそれを拾い、リングの部分を左手の薬指に通す。  そのまま(こぶし)を握りしめ、捨てないぞ、と思った。負けるもんか。
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