部室に残る天気雨

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「玲音先輩! 戻りました!」 「おう、お疲れ。サンキュー」 先輩に近づき、ラッキーストライクを差し出す。さっそく透明フィルムを開ける先輩の隣に座り、僕も自分が買ったものを取り出そうとする。 「サニーは何買ったん?」 隣でガサガサと音を立てる僕を先輩が気にしてくれている。 「これです!」 僕はパピコを取り出して見せた。さあ、この誘いに乗ってくるんだ先輩っ。 「パピコやん! うわ懐かしい。一本くれよ」 来たっ! 僕は作戦通りにパピコを先輩とシェアする。同じものを分け合うのは、むず痒いけど嬉しい。 先輩はパピコの先っぽを引きちぎり、ちゅっと吸って、笑顔になる。 「パピコはさ、この先端部分が一番うまいよな」 「ですよねー」 僕は自分の分はまだ食べず、パピコを吸う先輩を眺める。 始まったばかりの僕の大学生活は、パピコで言うならまだ先っぽの部分だろう。この甘さを、最後まで続けることができたらどんなに楽しいだろう。
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