部室に残る天気雨

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「もう最悪っ! 夕立のせいでビショ濡れよ! 玲音、タオル持ってない?」 4年生の陽向(ひなた)先輩だ。部室が隣の、女声合唱部の部長をしている。一緒に学内のイベントで歌うこともよくあるため、それぞれの合唱部は交流が深い。部長同士ともなれば、なおさらだろう。 「玲音が珍しく部室に来いなんていうから、晴れ女の私が雨に降られるのよ。レオじゃなくて、本当はレインって読むんじゃないのあんたの名前」 陽向先輩はすらりとした長身にセミロングの黒髪で、かわいい系というより、目鼻立ちのくっきりした美人のお姉さんという感じだ。 玲音先輩が、笑いながら手近にあったタオルを放り投げる。 「水も滴る、ってやつだな」 「誰がイイ女よ」 陽向先輩はそのまま受け取り、髪を拭く。 「自分で言ってりゃ世話ないわな」 「そう? 玲音もそう思ってるんじゃないの?」 玲音先輩は肩をすくめ、その質問には何も返さず、吸い尽くしたパピコをゴミ箱に捨てる。
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