青空に泣く

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 湊。  おまえ、絵なんか見なかったくせに。 「雨の音が聞こえた、って」  照れたような自慢するような今まで聞いたことのないような甘やかな声色(こわいろ)に思わず顔をしかめた。  きゃああ、湊ってそんなこと言うの? やだ素敵、はしゃぐ声に押されるようにその場を離れた。  知っていたさ。  湊は昔から海翔のものを欲しがる。 「同じもの、買ってもらった」 「仲間に入れて。いっしょに遊ぼうよ」  おもちゃも本も友達も、屈託(くったく)のない笑顔で手に入れてきた。  そうだろ? 湊。    
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