青空に泣く

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「ねえ、ベランダに出ない? アイスは暑い中で食う方がうまいからさ」  湊は自分のサンダルを指でひっかけるようにして持つと、玄関からベランダへと移動した。  同じ団地の二階と六階、間取りはほぼ同じ、勝手知ったる他人の家、だ。 「やっぱ上の階はいいよな~」 「そんなに違う?」  湊が持ってきたソーダアイスを渡す。 「違うさ。空がうんと近い。おお、空とアイスが同じ色だ」  明るい湊の声と青色が重なる。  湊を真似(まね)て空に棒付きアイスを(かか)げた。  すっきりした水色。 「うめー。気持ちいいなあ」  冷たさが()みる。  薄い甘さと空の色。
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