青空に泣く

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 二学期が始まり、夏の燃えるような空気の熱が冷めた頃には湊と中村麻帆が肩を並べていることが、珍しくなくなっていた。  いつから?  どうして?  まあ、別にいいさ。  彼女の描いた絵が気になっていただけで、彼女を好きだったわけじゃない。  そんな言葉を胸の中で言い聞かせるように何度も繰り返していた海翔は、美術室の前で足を止めた。 「麻帆と湊って意外な組み合わせだよね。ねー、何きっかけ?」  中村麻帆の隣にいるのは違うクラスの女子だった。 「きっかけっていうか……」  これって盗み聞きだよな、と思いながらも海翔は動くことができなかった。 「去年学祭に出した絵を、好きって言ってくれたから」 「ああ、あの青い絵? 凄かったよね。青い絵の具を何本も使ったって言ってたっけ。迫力あったもん」
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