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「あーあー、マイクテスト、マイクテスト……えーと、聞こえる?」  画面に映し出された彼女は、小さく手を振りながらこちらを覗き込んでいた。歳は二十代前半くらいで、身につけているのは半袖の黒い襟付きブラウス。そこから出ている腕は色白い。上半身しか見えていないので定かではないが、彼と同じく全身黒装束かもしれないとあかりは思った。インカムを通して空間に響き渡る彼女の声は、音量もエコーのかかり具合もほどよかったが、あかりは目の前で起きていることを把握するのに必死で、言葉を発することができなかった。 「あれ? 聞こえてない? えー、どうしよ。これもダメだったら他に思いつかないよ……」 「モカさん」  あかりの隣で、彼の乾いた声が響く。「モカ」と呼ばれた女性は、音声が通じたのがよっぽど嬉しかったようで、表情や声のトーンが一気に明るくなった。 「レオ君! なーんだ、聞こえてるなら、そう言ってよね! 連絡手段が断たれたと思ってすんごく焦ったんだからー!」  すると、「レオ」と呼ばれた彼が気怠そうに息を吐く。 「それで……この状況はいったい何です?」 「何って、こっちが聞きたいわ! いつも通りの手順で、いつも通りに作業してたら、いきなりこれだもん!」  モカはプリプリと怒り出す。それを見て、何か諦めたようにレオの目がゆっくりと閉じていく。
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