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「いつも通りやってたらこうはならないと思うんですが……」
ぼそっと呟かれた言葉に、モカは頬を膨らませる。
「だから、知らないって! 別に私は何もやってないからね! 本当だよ? ほ・ん・と! こんなことで嘘ついてもしょうがなくない?」
「あのー」
デットヒートが繰り広げられる最中、あかりが遠慮がちに声を上げる。なるべく自然な会話の切れ目で声を発したつもりだったが、次の瞬間、モカの怒りに満ちた視線があかりに突き刺さる。それにギョッとしながらも、あかりは言葉を絞り出した。
「説明してもらえます? さっきからどんどん話が進んでいって、私だけ全然ついていけてないので……」
そう言い切ると、モカは「ああ、そうだった」と口元を緩め、一気に穏やかな表情になった。
「あかりちゃんの言う通り、一度整理してみましょうか」
滞りなく彼女の口から発せられる名前──レオと同じく、彼女もあかりの名前を知っているようだ。
モカは頬杖をつきながら、前屈みになった。その拍子に耳にかかっていた長い髪がスルリと前へ垂れる。名前の由来になったのかは分からないが、艶がかったモカブラウンの綺麗な髪だった。
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