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「あなたは事故に巻き込まれて死亡した……ということで間違いないでしょう。こんなに派手な横転事故、無傷でいる方が奇跡かと」 「ちょっとストップ」  そのとき、レオの体が後ろに引き寄せられる。見れば、あかりがレオのロングコートを引っ張っていた。 「なんです、いきなり」  話を中断され、切れ長で細いレオの目がさらに鋭利になる。レオに睨まれたあかりは掴んでいたロングコートを離し、気まずそうに顔を掻いた。 「いや、その……場所変えない? ここにいると、こう……平衡感覚っていうの? それが狂って気持ち悪くなっていくというか……」  ここは大きく傾いた車内。90度真横に倒れただけならまだマシだったかもしれないが、回転軸が少しずれているのか、あかりの足場は運転席に向かって下り坂になっていた。 「だからさ、場所変えません?」 「ダメです」  一応敬語にしてみたがそこは譲れないらしい。レオは思った以上に頑固だった。 「僕、言いましたよね? あなたの仕事は何もしないことだって。黙って見てもらってるだけでいいんですよ?」 「いや、それは分かってるけど……周りを見てると酔って気持ち悪いんだって」 「だったら、目でも瞑ってればいいじゃないですか」  そう言われて、あかりがすぐに目を閉じたが、一拍も置かないうちに首を振る。
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