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「ダメ! 脳がここにいちゃいけないって言ってる!」
自分が酔わないように首の振り幅を最小限にするあかり。レオはすぐに冷たい視線を向ける。
「もう少しで終わるので我慢してください。これ以上中断させたら本当に地獄行きにさせますよ?」
「その人の意見、賛成」
あかりが驚いて目を開けると、あっけらかんと手を挙げている佐和子と目が合った。たちまち顔から血の気が引く。
「え、私地獄行き?」
おどけているあかりに、佐和子は顔の前で手を振りながら笑っていた。
「そっちの人じゃなくてお姉さんの意見に賛成、ってこと。まだ話が続くんでしょ? 自分が死んだかもしれないところで、もうあれこれ話聞けないよ……」
言い切る前に言葉が尻すぼみになる。顔は笑っていたが、瞳は相変わらず潤んでいる。
(この子も私と同じで、死んだんだよね……)
あかりはゆっくり視線を移す。横転したバスが進む先にはビルの壁。よく見ると、足場が組まれ灰色のネットが貼られてているので建設中らしい。このまま行けば正面衝突は免れない。
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