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「あかりこそ、今日はやけにのんびりだな? もう出ないと遅刻するんじゃないか?」
そう言われて、あかりはリビングの壁掛け時計を確認したが、普段家を出ていく時間まであと三十分以上ある。
「全然。余裕だよ? 食後にデザート食べれちゃうくらい余裕」
あかりはトーストを齧る。しかし、言い切ってから違和感を覚えた。いつもと同じ時間に起き、いつもと同じように支度をしているわりには妙に余裕がありすぎる。
あかりはもう一度時計を確認した。よくよく観察していると、秒針が『10』のところで痙攣している。
「あれ? 針止まってる……?」
「いやだ、もう! 新しい電池に換えなくちゃね!」
母親は食器を洗う手を止め、戸棚を漁って乾電池を探し始めた。そんな彼女を横目に、あかりはたっぷりピーナッツの塗られたトーストを齧る。しっかり味わった後、テーブルの上に置きっぱなしになっていたスマホの電源をつけた。
「ん……?」
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