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 走り続けて数分。ようやく最後の交差点が顔を出したとき、歩行者用の信号はちょうど青を示していた。 「よし、間に合う……!」  あかりはスピードを緩めることなく、横断歩道を突っ走った。しかし次の瞬間、体はあらぬ方向に吹き飛ばされ、さっきまで真上にあったはずの空は、気付けば視界の真下に来ていた。  すぐに理解できなかったが、体が重力に従って地面に引き寄せられていく過程で、自分の身に起こったことが徐々に明白になっていった。左側から猛スピードで車が突っ込んできたこと、そして自分がそれを避け切れなかったこと──それを完全に理解したのは、固いコンクリートに打ち付けられる直前だった。 (終わる)  そう感じとき、皮肉にも一限目のチャイムが遠くで聞こえた。
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