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「え……何これ?」
床に落ちたものを恐る恐る覗き込むと、それは黄色に光り輝く鍵だった。あかりはすぐさま少年に視線を送り説明を求めたが、彼は大きな扉をじっと見ているばかりでこちらを見向きもしない。彼が見つめている扉には、ちょうど胸の辺りに鍵穴のようなものが確認できる。
(これで開けろってこと?)
あかりは床に落ちた鍵を拾い上げ、それをじっくりと眺めてみた。優しい光に包まれた鍵はほんのりと温かい。扉と同じ黄色の光を放つ鍵だ。
(天国に続く扉的なやつかな?)
死後の世界などもちろん初めてなので勝手は分からないが、とりあえず扉を開けて先に進むということで間違いないらしい。
(まあ、なんか間違ってたらさすがに言ってくれるよね……?)
そんなことを思ってもう一度彼を見たが、目を合わせて何か説明してくれる様子は微塵もない。あかりは彼の挙動を伺いながら、ゆっくりと扉へ近付いていく。扉の目の前まで来ても彼は微動だにしなかった。あかりは不安を覚えつつも、持っていた鍵を扉に近付けた。しかし鍵穴に差し込む直前、けたたましい警告音が鳴り響き、真っ白だった空間は一面真っ赤になった。
「え!? なになに!? 私なんかやっちゃった!?」
触れてはいけないところに触れてしまったのか、はたまた順序が悪かったのか。慌てふためくあかりをよそに彼は上を向く。
「どうしたんです? トラブルですか?」
また誰かと話している。あかりも釣られて上を見たが、特に何もない。
「もしもし? 応答してください」
彼の声が少し荒くなる。警告音は一向に止まないし、空間も赤いまま。とにかく異常事態が発生しているようだ。
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