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「何ここ……本当に天国なの?」
あかりは涙目になりながら辺りを見回す。
(天国って、もっとあったかくてホワホワしたところじゃないの?)
イメージとはだいぶかけ離れている「天国」にショックを隠せない。
「天国ではありません」
すると、すかさず鋭い言葉が隣から飛んでくる。あかりは「へ?」と間抜けな声を出しながら彼を見たが、これまた詳しい説明はなく、彼は見上げた姿勢のまま動かない。死後の世界で、かつ天国でない──少し考えてみたが、天国でないとすると、自ずと答えはもう一方に決まってくる。あかりの顔はみるみる青ざめていった。
「ま、待ってくださいよ! たしかにちゃんと確認せずに飛び出した私も悪かったかもしれないですけど、一応青信号でしたし……」
あかりは、彼にまとわりつきながら必死に弁明を続ける。
「悪かったとは思うんですよ? 慌ててた自分も……でも、地獄送りなんてあまりに酷すぎません? 閻魔様」
「地獄でもありません」
そのとき、彼が被せるように言い放つ。くどくどと言い訳を続けようとしていたあかりの口はピタリと止まった。
(天国でも地獄でもない……だとすると、ここはいったいどこ?)
「あと、僕は閻魔様ではありません」
ハッとして彼を見ると、とても不服そうにこちらを睨んでいる。
「あ、ですよね……すんません」
(冷たい感じがしたから、てっきり閻魔様かと思ったのに)
そんなことを言えばもっときつく睨まれるに違いない。あかりは喉元まで出てきたその言葉を静かに呑み込んだ。
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