焼肉店②

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焼肉店②

焼肉店新規オープンに向けてチェックを続ける村山とサブ。 「ああ、大事な事を忘れていた。サブ、メニュー表を持ってこい」 「ゲス」 仮事務所からメニュー表を持参すると村山に渡す。 村山は一目見るとみるみるうちに怒りのボルテージを上げていった。 「サブ!!なんじゃこりゃ~!!」 バシィ!!とメニュー表を地面に叩きつけた。 「な、何がゲスか⁉」 「ハラミ、カルビ・・・淡々と品目が並んでやがる。『隣の店から借りてきました』と言っても違和感のねえ、個性が無い!!俺はいつも『名前が大事』って言ってるだろうが~っ!!」 「し、しかし、ハラミはハラミでゲス」 「じゃあ聞いてやる。ハラミってなんだ?」 「え・・・し、知らないでゲス」 「そうだ、友達(ツレ)と焼肉に行ったら『ハラミって何処の部位かな』って会話に人生1度はなる筈だ。んで、ネットとか調べてみんな1度は学ぶはずなのに、次に焼肉に行く時にはなぜか忘れている。焼肉あるあるだ!!」 「確かにでゲス」 「ハラミってのは横隔膜で実はホルモンなんだよ、流通しまくってるから実感が無いが実は希少部位だ」 「へぇ~、でゲス」 「だから俺の店では、ホルモンのメニューのところに載せる。そして商品名は『肉感たっぷりレアハラミ』とする。もちろん一目で見分けが付かないように盛り付けにも工夫を入れる」 「どの様にゲスか?」 「まず、肉感たっぷりの名前に負けないように厚めにスライスを入れる。これで食べ応えが出る、さらに牛脂を微量程度でいいので注射することで普通のハラミとは味わいも変わる」 「た、確かにインパクトはあるゲスがそれでは『普通のハラミが欲しい』という客にはどう言うゲスか?」 「『これがウチの普通です』で押し切る様にスタッフを教育しろ、その際に事実は絶対教えるな、店長のみにしておけ」 「しかしそれではスタッフが客に説明できないゲスよ」 「それでいいんだよ、分からない事で客が勝手にいい様に解釈してくれる」 「そ、そんな上手くいくゲスかね」 「値段も普通のハラミより高めにしておけ」 「ア、アニキ・・・スタッフがちゃんと説明出来ないような高めのモノ・・・そんなの売れないでゲスよ」 「やれやれ、少し説明が必要だな」 「お願いしゲス」
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